空を手に入れる方法

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空中に浮かぶ

 バスを待つ間、空を仰いでいる。地面に濃い影を落とす、綿菓子のような雲に目を奪われる。弾んだ気持ちでバスに乗り込む。
 空席に座った私はやはり、空を見ている。

 積雲は見ていて飽きることがない。
 時間とともに音もなく形を変える、それはまるで無言劇のようだ。空という青い舞台で思うままに動き回る。見るほどに眼も心も奪われていく(いや、確かに私はいつだって、空に焦がれているのだが)。
 そうしてすでに囚われた心は無意識の内に、空を、雲を、求めている。不意に私は思い出す。空に浮かぶ、都市のことを。
 かつてアンデスに栄えた、空中都市と呼ばれた地。
 あの標高約2300mもの山頂に築かれた都市では、雲が周囲の谷底から沸き上がる。そこならばおそらく空にさえ手が届く。
 私は斜面に作られた階段状のテラスに立っている。
 足下からわき上がる雲と、想像以上に近い空は、私の心を浮き立たせる。
 私は周囲を見渡す。
 一部が崩れたとはいえ、高度な建築技術のためか、未だその原型を留める中央神殿。段々畑。石造りの居住跡。水路。
 ここが「老いた峰」、空中都市と呼ばれるマチュピチュだ。

 私は空を仰ぐ。本当に空が近い。
 アンデスの山の頂に、人は都市を築き、暮らしていた。空と雲と山しかない、生きるにはあまりに過酷なこの土地に、人は都市を作り上げたのだ。
 ここにかつて生きた人々は、きっと空に焦がれていた。
 雲を手に入れたかったのだ。
 私はその場に寝ころんだ。
 雲が立ち上る。
 空へ向かって手を伸ばす。
 その手で私は空を掴む。
 空中に浮かぶ都市で眠る。焦がれていた空に限りなく近い街で、かつての人々の鼓動を感じながら、私は眠る。
 覚めることのない、青い夢を見ながら。

「次は〜南町3丁目〜、南町3丁目〜」
 私の眠りは即座に覚まされることとなった。

メモ
元ネタ:「天空の城ラピュタ」、歴史の教科書
空中都市とか、天空都市とか、言葉そのものが好きです。
青い空と白い雲、と好きなものを詰め込んでみた話。
こちらもやっぱり2001年頃。