道端1
道端に街灯一つ切れかけており、雲の流れは速く月明かりは心許ない。
両手に広がる畑は夜に沈殿し、遠い山の端は漠然と影だけを空に残す。
ヒグラシはとうに鳴き方を忘れ地に伏した。
代わりに今はコオロギやスズムシが耳障りな声で歌う。
道端に街灯一つ、繰り返す点滅に集まる虫が作るノイズが、目から脳へと伝達される。
受信したのは微かなノイズ。データを乱し、体を駆け巡るノイズ。
ぶつりと音を立て、道端に街灯一つ切れており、
ふつりと意識は途絶え、道端に人一人事切れており。
道端2
道端に街灯一つ切れかけており、伸びる道の両手には黒く沈んだ稲の葉が、夜風にさわさわ揺れている。
雲に覆われ心許ない月明かりを頼みの綱に、夜に紛れた道を行く。
道端に街灯一つ切れかけており、風に身動ぐ葉のため息を、肌に感じて一人きり。
次の明かりまで数十メートル。
深呼吸
一つ、二つ、深呼吸。
青い空の中、薄い雲の中、叩きつけるような風の中。
地上をはるか眼下に見下ろし、三つ、四つ、繰り返す深呼吸。
ゴーサインにゆっくり頷き、五つ、六つ、もったいぶったように深呼吸。
浅くなりそうな呼吸を自分の意思で抑えつけ、七つ、八つ、九つ。
決意を固め、最後の一息。
十――空へとダイブ。